今週の『ドラえもん』は、渡辺歩氏が絵コンテ・脚本の『あの窓にさようなら』だった。相変わらずこの人の演出は、日常感を大事にしていて、しんみりさせてくれる。これほど素晴らしい演出力をもった人なのに、来年のドラえもん映画は監督やらないんだよね。やっぱり『緑の巨人伝』でムチャしちゃって、「監督としてその域に達してない」と判断されたんだろうかw
個人的に渡辺氏はオリジナルをやるべきだと思っているのだが、そもそもシンエイ動画はオリジナルには消極的だからなあ…。渡辺氏自身がシンエイをやめないかぎり、おそらく今後も『ドラえもん』に関わっていくのだろう。たとえ監督という立場でなくとも。
ところで、この『あの窓にさようなら』。大山のぶ代版で演出・絵コンテをやっていたのは、あの原恵一氏だった。何度かBパートや特番で再放送されていたので、よく覚えている。今のポップさが目立つ水田ドラ版とは違い、穏やかでやや地味な演出は、まさに原監督らしいといえる。「心に残るお話30」の候補にも上がっていたのだが、残念ながら今の水田ドラに慣れ親しんだ子どもたちからは票を集められなかった。(ベスト30の7割は水田ドラ版への投票だったので。)それゆえ、もっと早く水田ドラでこれをやってほしかった。そうすれば、来月発売のDVDに原恵一版(大山ドラ)と渡辺歩版(水田ドラ)の両方が収録されたかもしれんのに。
「心に残るお話30」のDVDには新旧版そろって収録されるのだが、個人的にあまり評価していない作品も入っているので、正直BOXで買う気にはなれない。なので、気に入った巻のみを買おうと思っているのだが、それぞれの巻の収録内容を調べてみると、意外と興味深い見どころもある。簡単に購入前レビューを。なお、それぞれの巻には「○:購入 △:検討中 ×:買わない」の印をつけている。
- あべこべの星(1992年・大山)
- あべこべの惑星(2009年・水田)
- ガンファイターのび太(1987年・大山)
- 宇宙ガンファイターのび太(2008年・水田)
- 流れ星ゆうどうがさ(1991年・大山)
- 七夕の宇宙戦争(2008年・水田)
原作は『あべこべ惑星』(17巻)、『ガンファイターのび太』(24巻)、『流れ星ゆうどうがさ』(プラス5巻)の3本なのだが、本当に同じ原作なんだろうかというくらい大きく異なっている。舞台を宇宙に移して設定やストーリーを大きく変えてしまった『宇宙ガンファイターのび太』とか。(『あべこべの惑星(2009年版)』は大山版を踏襲している感じだったが。)『ガンファイターのび太(1987年版)』は何度か再放送で観たので、それだけ思い入れが深いのだが…。
- おばあちゃんのおもいで(1979年・大山)
- おばあちゃん大好き(1986年・大山)
- おばあちゃんの思い出(2007年・大山)
- ベロ相うらないで大当たり!(1979年・大山 / 2008年・水田)
- 帰ってきたドラえもん(1981年・大山)
- さようならドラえもん(2009年・水田)
『おばあちゃんのおもいで』『帰ってきたドラえもん』は、どちらかといえば渡辺歩監督の劇場短編のイメージが強いんだよなあ。なので、テレビ版のほうも改めて見返しておきたい。(大山版は2バージョンあるし。)ちなみに、『ベロ相うらないで大当たり!(2008年版)』も渡辺歩絵コンテ。
- 僕の生まれた日(1979年・大山 / 2008年・水田)
- ドラえもんの青い涙(2008年・水田)
- バイバイン(1979年・大山 / 2008年・水田)
- ドラえもんの健康診断(1990年・大山)
- ドラえもんが重病に?(2007年・水田)
- もうひとつの“緑の巨人伝”(2008年・水田)
水田版のアニメオリジナルが2本収録。(個人的にあまり評価してないけど。)『僕の生まれた日(1979年版)』は観ておきたいが、1979年ってことは、「タイムマシンBOX」にも収録されるんだよね?
- 走れのび太!ロボット裁判所(2000年・大山)
- 木こりの泉(1987年・大山)
- きこりの泉(2005年・水田)
- 子ゾウのハナちゃん(1983年・大山)
- さよならハナちゃん(2008年・水田)
- ドラえもんVSドラキュラ(2008年・水田)
- アスレチックハウス(1979年・大山)
- むりやりアスレチック・ハウス(2007年・水田)
『ロボット裁判所』やら『ドラえもんVSドラキュラ』やらアニメオリジナルが入っているので、あまり気が進まないのだが、それでも買う理由はただひとつ。『木こりの泉』のきれいなジャイアンが観られる(笑)
- 台風のフー子(1979年・大山 / 2007年・水田)
- 地底の国探検(1993年・大山 / 2007年・水田)
- キャンディーなめて歌手になろう(1979年・大山 / 2006年・水田)
- ドラえもんに休日を(1985年・大山 / 2008年・水田)
あまり気に入っていない作品が多いのでスルー。ところで、『ドラえもんに休日を』の2005年版(大山ドラ最終回)は黒歴史ということでよろしいので?
- テストにアンキパン(1979年・大山 / 2005年・水田)
- アンキパン(1992年・大山)
- 精霊よびだしうでわ(1981年・大山)
- のび太に恋した精霊(2008年・水田)
- 山寺のユーレイ騒動(1985年・大山)
- しかしユーレイはでた!(2008年・水田)
- 眠る海の王国プロローグ せん水艦で海に行こう(2008年・水田)
- 眠る海の王国(2008年・水田)
最大の見所は、1981年版の『精霊よびだしうでわ』。挿入歌が山崎ハコだ。『魔界大冒険』のようなことにはならないよね?
『ゾウとおじさん(1980年版)』は、個人的に大山ドラの中でベストワンの傑作。でも「タイムマシンBOX」にも収録されるからなあ。気になるのは『ドラえもんだらけ』。大山版の方は91年版と96年版の2バージョンというが、そもそも2つあったっけ?96年版のほうは全然記憶にないのだが。ネットで調べても確かな情報がない。誰か知ってる人いません?
- のび太の結婚式?!(1981年・大山)
- ノビタマン(1981年・大山)
- GO!GO!ノビタマン(2000年・大山)
- 正義のスーパーヒーロー 行け!ノビタマン(2006年・水田)
- どくさいスイッチ(1979年・大山 / 2005年・水田)
- のび太は独裁者?!(1995年・大山)
どちらかといえば大山版が多いが、『どくさいスイッチ(2005年版)』は水田ドラの中で最高傑作だと思う。大山版とも比較してみたい。大山版『ノビタマン』は2バージョンあったのか。
正直、こういう新旧ドラが入り乱れるかたちの収録は買う人を選びそうだ。ガチガチの大山ドラ派は、水田ドラを一切受け付けないだろうから、買うのをためらうだろうし。仮に買っても水田ドラは観ないか。ただ、大山版の中でも、初回版とリメイク版があるから、同じ大山ドラでも全く違った印象を受ける場面もあるだろう。「俺の思っていたドラえもんってこんなんだったっけ?」って言い出す奴も出てくるかも。ある意味、自らのドラえもんファン度がどれくらいのものかを試されているのかもしれない。