ぬるオタな日々 by 少恒星

アラフォー独身のぬるオタの日々戯言。

都青少年条例改正問題を追ってみて

「非実在青少年」規制盛り込んだ条例改正案、都議会が否決 -INTERNET Watch 「非実在青少年」規制盛り込んだ条例改正案、都議会が否決 -INTERNET Watch 「非実在青少年」規制盛り込んだ条例改正案、都議会が否決 -INTERNET Watch

まずはこの改正案(というより改悪案)が否決されたことを素直に喜びたいと思う。しかし、もちろんこれですべてが終わったわけではない。東京都はあくまでも成立させたいことに変わりはないようで、9月議会までの間に、都をはじめ規制を推し進めようとする勢力が反攻を強めてくる可能性は高いだろう。加えて、これと連動しているかのごとく、ブロッキングをはじめとした「児童ポルノ」に対する国の規制強化の動きも気になるところだ。もちろん、都条例そのものの趣旨については理解するし、実在の被害者がいる「児童ポルノ」への規制については反対しないが、そのための手段を間違えてはならない。「青少年の保護」か「表現の自由」かという、二項対立の構図で語るような問題にしてほしくない。そんな単純なレベルの話ではないということを、もっと多くの人に知ってもらう必要があると思う。

この数ヶ月、私はtwitterやシンポジウムなどを通じて都条例の動向を追ってきたが、もはや「表現の自由」だけに限った問題ではなくなっていると感じた。不透明な立法のプロセスに、「情報公開」とは言えないパブリックコメントの黒塗り、そして改正案に何の疑問も持たずに通そうとする東京都と、それに与する自民・公明の姿勢。情報が入れば入るほど疑問が深まっていくばかりだった。これが本当に民主主義に基づいた政治(地方自治)なのだろうか。本当にこの改正案は都民が望んだものなのだろうか。

今回は漫画・アニメに対する規制という、きわめて関心を集めた事例だけに、そうした問題点が浮き彫りになったわけだが、実はこれ以外にも、多くの住民が知らないうちに、住民が望んでもいない条例や議案が今までまかり通っていたのではないだろうか。私は東京都民ではないので、都の情勢についてはあまり熟知していないが、「五輪招致」や「新銀行東京」って、都民が望んでいたことですかね?他にも、知らない間にこんな決まりができていたとか、そんな事例あります?だとしたら、民主主義政治がほとんど機能していないことを証明しているようなものである。結局、政党に強い影響力を持つ団体によって政治が動かされてしまうというわけだ。

今回、否決されたとはいっても、賛成派の自民・公明と、民主をはじめとする野党の勢力が拮抗していたため、わずか3議席という僅差での否決だった。つまり、もし前回の都議選で自公が勝っていたら、この条例案はすんなり通っていたかもしれないのだ。今の政治情勢下では、少しでも政党の勢力が変わるだけで「表現の自由」が脅かされる危機的状況にあると言っても過言ではない。そのことは重く受け止めなければならない。

5年ほど前、私はライター講座に通っていて、そこである有名ジャーナリストの話を聞く機会があった。その方が言うには、「これから表現・言論に対する圧力はますます高まってくるだろう。メディアに携わるとしたら、それに立ち向かう覚悟を持たなければならない」。そして現在。都条例もそうだし、『ザ・コーヴ』の上映中止問題から見るに、状況はますます悪化している気がする。ネットが普及し、いまや一人一人がブログやtwitterで物事を伝えられる時代になった今に、時代に逆行するような流れが起きている。表現・言論の自由はわれわれ一人一人が持つ権利であるということを再認識しなければならない。

今回の一件は、ある意味ではいい機会だったのかもしれない。表現・言論の自由が危機的状況にあることと、政治に対して厳しい目を向けなければならないことを意識するという点において。それを踏まえた上で、私もできる限りの行動をしていきたいと思う。まずは参議院選挙。政党にこだわらず、「この人」と思える人に投票したい。