今年4月、ある外国人映画プロデューサーの「日本映画のレベルは低い」発言が物議を醸した。
この発言を受けて、今の日本映画は本当に酷いのかそうではないのか、映画ファンの間で様々な議論を呼び起こしたその一言は、ともあれ今の日本映画の置かれている状況を象徴している出来事だったように思う。
そんなかくも言われっぱなしの有様に、なにくそと発奮したのだろうか。今年の日本映画は意地を見せんとばかり、例年稀に見るほどの傑作を連発。普通ならばベストワンに選ばれてもおかしくないような作品が、ベストテン圏外に追いやられてしまうほどに、大傑作が多かった。また、山戸結希、真利子哲也らといった若手有望株の台頭も目覚ましかった。そして『シンゴジラ』『君の名は。』というメガヒット邦画が現れた。そういえば、『ゴジラ』が興行収入で『君の名は』に62年ぶりに再び敗れるというのが話題になったが、その62年前の1954年は『七人の侍』『二十四の瞳』という日本映画史に燦然と輝く傑作が次々と現れた年でもある。1954年と同様、2016年もまた日本映画史に残る年として後世に語り継がれることになるだろう。
とはいえ、その認識を共有できている人が一体どれだけいるのだろうかと気になるところもある。安直な企画の日本映画が未だシネコンで蔓延り、今の日本映画に対するマイナスイメージがまだまだ根強いところも否めない。これを契機に、真に認められるべき傑作が、多くの人の目に触れられるようになることを切に願う。
【2016年邦画ベストテン】
- この世界の片隅に
- シン・ゴジラ
- ヒメアノ~ル
- 映画 聲の形
- リップヴァンウィンクルの花嫁
- 怒り
- クリーピー 偽りの隣人
- 君の名は。
- 後妻業の女
- 海よりもまだ深く
(次点)FAKE、永い言い訳
1位 この世界の片隅に
個人的に自分もクラウドファンディングに参加していただけに、今年最も観たいと思った映画であり、最も応援したいと思った映画でもあった。それがまさか、これほどまでの傑作になるとは思いもしなかった。戦時下の日常を通じて、その時代を生きた人たちに思いを馳せ、そして今のこの世を生きることの意味を強く考えさせられた。オールタイムベストに入れてもおかしくないほどの大傑作。
2位 シン・ゴジラ
1954年の日本人が『ゴジラ』に出会った衝撃と同じものを、庵野秀明はこの現代の日本人に与えたことだろう。あの東京駅にそびえ立つゴジラは、原発のメタファーに思えてならない。ゴジラを通して「3.11」を見事に描ききってみせた。
3位 ヒメアノ~ル
4位 映画 聲の形
5位 リップヴァンウィンクルの花嫁
6位 怒り
人を信じるということの難しさと辛さがよく現れていた。広瀬すずちゃんここでも大活躍。
7位 クリーピー 偽りの隣人
8位 君の名は。
その映像美と、予想もしなかったストーリー展開が光る。鑑賞後に訪れるモヤッとした感情は、相変わらず新海誠らしかったが。
9位 後妻業の女
10位 海よりもまだ深く