ようやく…
というか、この物語の結末を見届けられただけでも奇跡的なのに、これ以上ないものを見せられて、京アニファンで本当に良かったと思えるグランドフィナーレだった。
振り返ってみれば、この作品とも長い付き合いで、京都で行われた第1期第1話の先行上映会にも観に行ったほどだった。京アニの部活ものと言えば『けいおん!』だったり『氷菓』だったりと、少しおかしくもユルい部活動が展開されていて、見ていて楽しいものばかりだった。
1話先行上映会無事に終了致しました!いや〜楽しかったですね!本日お越しいただけなかった方も4月7日には放送スタートです!もう少しだけお待ちを!早くみなさんにこの作品をお届けしたいです!石原監督、武田先生と1枚!#anime_eupho pic.twitter.com/6Bmi6NooSh
— アニメ「響け!ユーフォニアム」公式 (@anime_eupho) 2015年3月28日
しかし、この『ユーフォニアム』は違った。それまでのユルいのとは違い、全国のコンクールで金賞を狙うというガチの部活。文化部だけどやっていることは体育会系。見ていて楽しいどころか辛いことばかりだ。中学では軟式テニス部をやっていたもののろくに勝てず、それ以降は部活から離れてしまった身としては、あまり触れたくないジャンルだった。しかし、そこはやはり京アニの魔力だろうか。第1話を見てからは自然と受け入れてしまったし、そのあとに待ち構える数々の難題や困難に心が締めつけられるも、それを乗り越えていく北宇治高校吹奏楽部のメンバーに魅力を感じるようになった。そしてこうも思ってしまった。「自分もこんな青春時代を送りたかったなあ」と。もし彼らのような経験をしていたら、今に至るまでの人生もだいぶ変わっていたかもしれないと。いつの間にか、羨望にも似た気分を覚えてしまった。そうしてずっと作品を追いかけ、イベントにもちょくちょく参加するなどして、結果的には京アニ作品の中では一番長い付き合いになっていた。
そして迎えた3期最終話。全国大会に進出した北宇治高校吹部の最後の演奏が披露される。嬉しいことも、悲しいことも、楽しいことも、辛いことも、悔しいこともあった3年間。その数々の回想がインサートされ、渾身の演奏と共に、自分の心に響かせる。ここまで来たら、全国大会金賞なんてどうでもいい。この3年間そのものが立派な誇りで宝ではないか。そう思えるくらいに眩しく見え、3年間のあらゆる思いが凝縮された見事な演奏だった。そして結果は見事に金賞。落ち着くところに落ち着いた結果ではあるが、決して予定調和には行かなかった過程を思えば、与えられて当然のものだ。
一方で、作品としては第1期の放送から9年の歳月が流れた。この9年は、京アニにとっても特別な9年だったに違いない。どうしても頭をよぎるのは5年前のあの悲劇。そのとき私は、物語の結末を見ることは叶わないかもしれないと覚悟した。あの状況で、自分たちが彼らに何かを求めるのは酷ではないかとも思った。さらにコロナ禍が世界を襲い、アニメを作ることすらままならないことも起きた。しかし、それでも彼らは乗り越えて前を向き続けた。まるで久美子たち吹部メンバーとリンクしたかのように、クリエイターとしての強い誇りを持って、私たちにこの物語の結末を届けてくれた。
象徴的だったのは、第3期第10話のワンシーン。あすか先輩にアドバイスされた久美子は決意し、一人精一杯駆けていく。そのカットは明らかに、第1期第12話で「うまくなりたい」と叫んで駆け出したあのシーンのリフレインだ。そのコンテを書いていたのが、京アニの精神的支柱でもあった三好一郎(木上益治)。背景動画まで組み込まれた、感情の揺れ動きが激しい、難易度の高いカットを、再び彼らはやってのけた。それは亡き先輩への挑戦と共に、彼の技術や思いを継承していこうという意思にも見えた。さらに言えば第3期第12話の大吉山でのワンシーン。指摘するまでもないが、紛れもなく第1期第8話との対比として演出されたシーンだ。元は藤田晴香のコンテ・演出回だが、麗奈の指が久美子の唇に触れる芝居を思いついたのは、シリーズ演出の山田尚子だったという*1。その二人は新たな活躍の場を求めて会社を巣立っていった。いなくなった者、あるいは去っていった者が描いてきたものや、そこに秘めた思いを受け継ぎ、次へと繋げていく。あすか先輩が久美子に教えてくれた練習曲「響け!ユーフォニアム」を、今度は久美子が奏たちに引き継いでいくかのように。久美子たちが北宇治で過ごした3年間は、京アニがこの9年間に経験したあらゆる思いそのものでもあったのだ。
奇しくも作品の舞台となる宇治に、「志を繋ぐ碑」が設置されることが先日発表された。志を繋いでいくという京アニの思い、それはまさに『響け!ユーフォニアム』が体現したことであり、設置されるのにこれ以上相応しい場所はなかろう。落ち着いたら、感謝と哀悼の意を伝えるべく、また宇治を訪れたいと思った。



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