今期も気づけば20本近くも新作テレビアニメをチェックしてしまっているが、そんな中で最も惹かれているのが『スーパーカブ』だ。
最初は『ゆるキャン△』みたく、まんがタイムきらら系のゆるいアニメだろうと思っていたが、蓋を開ければ実写映画のようなストイックさ。主人公の小熊は、“両親もいない、お金もない、友達もいない、趣味も将来の目標もない「何もない、ないない尽くしの天涯孤独の女の子」”*1。なかなかに重い境遇の女子高生。住んでいるアパートは暗く、彼女の人物像をそのまま反映したかのよう。お昼は白米のみの弁当箱に、レトルト食品を温めずにそのままかけるだけという質素な食事。きらら系とは正反対な、薄幸感に満ちた場面からのスタート。しかしながら、ただならぬものを感じてしまい、妙に引き込まれてしまった。
やがて小熊はスーパーカブと出会い、彼女の世界は新たな広がりを見せていく。その世界が広がっていく様を、画面の色彩の変化で表現しているのが憎い。いわゆる「銀残し」風な色調をベースとし、要所要所の場面で彩度を上げ、明るく色鮮やかに見せていく。使い古された演出ではあるものの、カブにまたがったり、少し寄り道したり、初めてのことにチャレンジしたりとという、ほんの些細な変化を捉えて、世界が変わったことを強調している。そして普段は無表情な小熊の顔がほころぶ。その一瞬が可愛らしく尊い(笑)
そんな些細な変化を重ね、小熊は第6話で大胆な行動に出る。以前の彼女なら考えられないことだが、それもスーパーカブと出会ったからこそできたこと。それまで何もなかったから、反動もそれだけ大きい。そこまで自分の世界は変えられるのだと感嘆したのと同時に、自分も学生時代にもっと早く何かに出会っていればと後悔。カブ仲間の礼子と二人乗りして海沿いを走る姿は、まさに青春の一ページだった。
なんて書いていたらこんなニュースが、、、
この世には、フィクションはフィクションだと割り切って、純粋に楽しめない人がいるんだなあ・・・。世知辛いというか、かわいそうというか。
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