ぬるオタな日々 by 少恒星

アラフォー独身のぬるオタの日々戯言。

緊急事態宣言発令前日に「アニメージュとジブリ展」へ行った話

もとより政治には何の期待もしていないが、今回はさすがに今までで一番政治に腹が立ったかもしれない。

人の流れを止めたいというのはわかる。だが、それには十分に見合った補償が必要だ。国内産業は冷え込む中、鬼滅やエヴァの映画は大ヒット。もとより映画やアニメを始め日本の文化・芸術は、長きにわたり次々と世界を驚かせてきた。もしかしたら、この国に残された最後の希望かもしれない。だというのに、この酷い仕打ち。この国は文化・芸術を守ろうという気が毛頭無いのか。オリンピックさえできればそれでいいと考えているのか。あまりに悲しいし、悔しい。もっとも、ここまで政治を腐らせたのは、それまで政治と真剣に向き合おうとしなかった国民の責任というのも考えられるが・・・。

ともかく、こんな理不尽な形で緊急事態宣言が発令され、4月25日からは都内の映画館はシネコンを中心にほとんどが休館。イベントも多くが開催中止に追い込まれた。

アニメージュジブリ展」も例に漏れず、4月24日をもって松屋銀座での開催は終了となってしまったが、幸か不幸か、その日のチケットを予約していたので、滑り込みで展示を見ることができた。

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f:id:shinchu:20210425223948j:plain入場に際しては入場区分が設けられ、チケットに記載されたアルファベットの指定時間に待機列に並んでもらうという感染症対策が行われていた。それなりの対策はされている印象だったが、これでもまだ不十分だというのか。

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入場口には、アニメージュの歴代表紙がズラリ。その中央の柱にはフランスの映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」。鈴木敏夫氏がアニメージュを作る際にイメージしていたのが、この雑誌だという。作家主義を掲げた「カイエ・デュ・シネマ」のイメージが、やがてアニメージュに反映されていく。

ジブリ」がイベントの名前に入っているだけあって、今回の展示は、アニメージュがどのようにして宮崎駿らを見出し、スタジオジブリの設立に結びついたのかが中心軸になっている。とはいえ、アニメージュの創刊経緯や、ガンダムブーム最中のアニメージュの立ち位置にも触れていて、全てのアニメファンには必見の内容。さらに、宮崎駿のみならず、富野由悠季大塚康生押井守らといった、名だたるクリエイターに着目していった点も、作品資料や当時の誌面の展示を交えて振り返っている。特に富野氏に至っては、ガンダムブーム当時の姿と、今年のTAAF2021の授賞式で鈴木敏夫氏と2ショットで映った写真(下記参照)がデッカく展示されていて、ちょっと笑ってしまった。この二人仲良いんだなあ・・・。

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会場では「風の谷新聞*1」が「復活」。鈴木敏夫氏と押井守監督のインタビューを収録。なお、この新聞は「次回巡礼会場へ続く!?・・・かも?!」だそうな。

展示物は、アニメージュの当時のつり広告や付録、アニメージュ文庫の本など、当時の読者には懐かしいものばかり。当時の誌面(複製)も至るところに展示されていて、当時の「作家主義」の濃さを伺える。同誌での原作連載から生まれた『風の谷のナウシカ』の原画や背景美術などの作品資料、さらに当時の宣伝物の展示も充実。庵野秀明氏が担当した巨神兵の原画も展示されていた*2

一方で、押井守監督の『天使のたまご』の資料も展示されていたが、来場者の多くは『ナウシカ』の資料には食い入るように見ていたのに対し、天使のたまご』にはほとんど目もくれなかったのが悲しかった。これが知名度の差か・・・。

藤子ファン的にツボだったのは、創刊号で藤子不二雄先生がお祝いのコメントを寄せていたことや、長年『ドラえもん』のチーフディレクターを務めた芝山努監督が宮崎駿監督作品の印象についてコメントしている記事、さらには日テレ版とテレ朝版のアニメドラえもんが同じ紙面で載っている付録ポスターが展示されていたところ。今だったら絶対ありえないな・・・。

作品資料の展示ももちろんだが、それよりも当時の記事の充実ぶりには、なかなか驚かされ、とても見応えがあった。今でこそネットや雑誌でクリエイターに注目した記事はよく見かけるが、今ほどアニメがメジャーではなかった当時に、クリエイターの技術や演出論、さらには人間性にまで踏み込んで、彼らの独創性を世に知らしめた功績は大きいと思う。クリエイターの力を活かすも殺すも、やっぱりプロデューサー次第なのだと実感。そしてリアルタイムで、このアニメージュと『風の谷のナウシカ』に接した当時の読者を羨ましいとも思った。 

アニメージュ」の展示イベントとしては大変満足の内容だった。あえて欲を言えば、「ジブリ」とは異なる別のアプローチから同誌を振り返る展示もやってもらいたいところ。「富野に訊け!!」や「この人に話を聞きたい」といった連載記事の展示イベントなんてのも面白いかも。

銀座会場は不本意な形で終了してしまったが、6月19日(土)からは宮城県石巻市でも開催が予定されている。今回行けなかった人は、ぜひ石巻まで足を運んでみては。そのときはコロナが落ち着いてくれていることを祈りたいが・・・。

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風の谷のナウシカ 全7巻セット

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*1:ナウシカのファングループ「風の谷七人衆」が発行し当時のアニメージュに掲載されていたという新聞の名前。「風の谷のナウシカ (ジブリ・ロマンアルバム)」にも一部が収録されている。

*2:ちなみにその原画は、ポストカード化されて会場のショップで販売されていた。