ぬるオタな日々 by @chusingura

実家暮らし・・・を晴れて卒業。三十路独身のぬるオタの日々戯言

水島努と渡辺歩~シンエイOBはなぜ仕事を多くこなせるのか~

『イカ娘』や『ガールズ&パンツァー』などのヒット作を連発し、そして今期、アニメ業界を題材にしたオリジナルアニメ『SHIROBAKO』を送り出す水島努監督
宇宙兄弟』や『団地ともお』といった万人向けのテレビアニメを手がける一方、『謎の彼女X』や『彼女がフラグをおられたら』といった深夜アニメにも精力的な渡辺歩監督

この二人の接点としてすぐに思い浮かぶのは、共にシンエイ動画のOBであるということだ。水島監督は主に『クレヨンしんちゃん』の演出、渡辺監督は『ドラえもん』の作画・演出を長年手がけ、双方のファンの間では広く知られた存在だった。そしてこの二人はシンエイを抜けたあとは、仕事の多さが特に目立つ。水島監督は年に2~3本はコンスタントにテレビアニメを手がけ、渡辺監督は『宇宙兄弟』『団地ともお』と通年作品を手がけながら、深夜アニメや劇場版を掛け持つという仕事ぶりだ。(渡辺監督については2014年10月現在は『団地ともお』一本と落ち着いてきた様子だが。)
 
すべてのアニメ監督の仕事を把握しているわけではないが、おそらくこの二人は現在の日本のアニメ界においてトップクラスに忙しい監督かもしれない。
 
何故この二人はこれほど多くの作品を手がけられるのか。いろいろと要因はあるだろうが、その一つにはやはりシンエイ動画出身ということにある気がしてならない。では、なぜシンエイ動画なのかということについては、ここからは私の推論であるが紐解いていきたい。

 

かつて二人が手がけていた『ドラえもん』と『クレヨンしんちゃん』だが、今でこそテレビと劇場版とで制作ラインを分けて作られているようだが、以前はテレビも劇場版も、同じ監督やスタッフが関わることが多く、おそらくテレビと劇場版の仕事を掛け持つといったことが多かったと思われる。また、劇場版の『ドラえもん』の同時上映で短編作品も作られることが多かったため、その仕事も回されることもあった。
 
特に顕著なのが渡辺監督のほうだ。以下は渡辺監督が98年~04年まで関わった『ドラえもん』劇場版と、同時上映の短編作品だ。
 
1998年
『帰ってきたドラえもん』(監督作画監督
ドラえもん のび太の南海大冒険』(作画監督補佐)
 
1999年
のび太の結婚前夜』(監督作画監督
 
2000年
『おばあちゃんの思い出』(監督作画監督
 
2001年
『がんばれ!ジャイアン!!』(監督作画監督
ドラえもん のび太と翼の勇者たち』(作画監督補)
 
2002年
『ぼくの生まれた日』(監督作画監督
 
2003年
Pa-Pa-Pa ザ☆ムービー パーマン』(監督・脚本)
ドラえもん のび太とふしぎ風使い』(総作画監督
 
2004年
Pa-Pa-Pa ザ★ムービー パーマン タコDEポン!アシHAポン!』(監督・脚本)
ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』(演出・総作画監督
 
上記のとおり、渡辺監督は98年から短編作品の監督を、作画監督あるいは脚本と兼任で務めていたが、同時に長編のほうにも作画監督補などの役職で関わっていたのだ。特に2003年以降は総作画監督という中核を担う役職に就いている。いくら短編とはいえ、長編の総作監をやりながら、短編の監督をやるというのは、今思うと信じられないのだが。
 
水島監督も、『クレヨンしんちゃん』の劇場版を97年~02年は演出や絵コンテ(99年には短編の監督も)に関わり、03・04年は監督を務めたが、その制作期間中でもテレビアニメの演出・絵コンテに入ることもあった。そのようなマルチタスクを長年続けてきたことで、仕事の動かし方を自然と身につけていったのかもしれない。
 
そして渡辺監督については、お手本になる人物が間近にいたということも影響していると思う。その人物とは、長年『ドラえもん』の現場で師事した芝山努監督だろう。芝山監督も『ドラえもん』をやりながら、『ちびまる子ちゃん』や『忍たま乱太郎』も手がけ、いずれも国民的人気アニメに育て上げた、まさに最もマルチタスクに長けたアニメ監督と言えよう。そういえば、『ダンガンロンパ』などの岸誠二監督も多作で知られるが、もともと彼は亜細亜堂のアニメーターで、その亜細亜堂の創業者の一人が芝山監督だった。彼もまた、芝山監督の仕事ぶりを見て影響を受けたのかもしれない。
 
もちろん、これはあくまで推論であり、たくさんの仕事をこなせるような協力体制がシンエイ動画には整っていたからということも考えられるだろう。実際、渡辺監督自身、最近の仕事ぶりについては、『宇宙兄弟』や『彼女がフラグをおられたら』などで共に仕事をしてきた上田繁氏の存在が大きかったとも語っている。そうした協力体制を監督自身が、あるいは周りのスタッフが作り上げていることで、二人の多作ぶりが成り立っているのだろう。
 
それでもコンスタントに作品を送り出していくその仕事ぶりは驚嘆に値する。個人的に馴染みのあるこの二人が、常に作品を送り出してくれるのは素直に嬉しい。これからもどうか無理をしない範囲で、私たちに新しい世界を見せていってほしい。