ぬるオタな日々 by 少恒星

アラフォー独身のぬるオタの日々戯言。

2012年劇場アニメマイベスト5

前回のテレビアニメベストテンに続き、今回は2012年の劇場アニメベスト5をまとめる。2012年に見た劇場アニメは15本にも上った。おそらくこれまでの最高だろう。

 
【第2位】『図書館戦争 革命のつばさ』
【第3位】『ももへの手紙』
【第4位】『009 RE:CYBORG』
【第5位】『虹色ほたる 永遠の夏休み』
【次点】『伏 鉄砲娘の捕物帳』
 
周知のとおりかと思うが、2012年は劇場アニメ活況の年だった。『ヱヴァ』や『ONE PIECE』の劇場新作、細田守監督の新作が軒並み大ヒットを記録。また『まどかマギカ』をはじめとする深夜アニメの劇場版が増え、私も結局必然的に劇場アニメを見る機会が増えた。
 
ただ一方で、客を呼ぶことを優先するあまり、粗製濫造になってしまうのではという心配もあった。今やBD・DVDの売り上げだけでは収益を得ることは難しいテレビアニメが、興行収入や劇場グッズの販売などで収入が見込める劇場に進出するのは必然の流れであった。だが、テレビドラマのように、劇場版になった途端に作品の質が下がってしまっている惨状を何度か目にしてきただけに、テレビアニメもまた同じような道を辿るのではないかという懸念を抱いた。中にはOVA作品を劇場でかけるアニメも現れており、安易な劇場アニメ化はかえって作品の寿命を縮めるだけではないかとも思った。
 
しかし、その心配は(とりあえずは)杞憂だったようだ。昨年鑑賞した劇場アニメは、おおむね映画として恥ずかしくない出来の作品が多くて満足できた。やはりテレビドラマを見る一般の視聴者と比べて、アニメファンはDVDやグッズに金と愛情をたくさん注いでいる分、作品に対する目が厳しい。少しでも変な物を作ればたちまち批判の嵐。そのことを作り手もしっかり感じているからこそ、緊張感を持って作品を作っているのだろう。本来、映画作りというのはそういうものである。今、日本の映画界で一番真の映画作りを実践できているのは実は劇場アニメではなかろうか。
 
 
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細田守監督は、これでもう宮崎駿に匹敵する演出家になったと思う。脚本に賛否はあれども、これまでの常識にとらわれない新たなアニメ表現の創造力と卓越した演出力は素直に認めざるをえない。私が一番気に入っているシーンは、【ネタバレにつき白字にしてます】雪が草平に自分がおおかみこどもだと明かすシーン。カーテンの揺れる動きとそのタイミングが見事。
 
【第2位】『図書館戦争 革命のつばさ』
図書館戦争 革命のつばさ Blu-ray特別版[初回限定生産版]

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冒頭から原発テロという3.11を経験した我々に緊張感を与える展開で、決して絵空事の世界ではないということを訴えかける。(原作がもともとそうだったとはいえ。)テロの犯行手口が、小説に描かれていたのと同じだったという理由で弾圧されるくだりは実にリアル。そうしたことに対する国や司法、そして無関心な国民にまでこの映画は批判の目を向ける。現代日本社会への痛烈なカウンターパンチだ。
これだけだとシリアスな雰囲気になりそうなところだが、コメディなシーンとのバランスがとても上手く、笹原と堂上の恋愛描写は観ていて微笑ましい。アクションシーンも見応えあり。実に爽快な社会派エンターテイメント映画だ。
 
【第3位】『ももへの手紙』
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人狼』の沖浦啓之監督待望の最新作。瀬戸内の情景の美しさもさることながら、人物もどこか暖かみのある作画。表情や動きが丁寧で緻密に描かれていてリアル。ももの母役・優香の好演技に思わず脱帽。
 
【第4位】『009 RE:CYBORG』
009 RE:CYBORG

009 RE:CYBORG

「善」とは何か、「正義」とは何か。石ノ森章太郎氏が「神」の存在を通じて描こうとしながらも果たせなかったテーマを、神山監督が受け継ぎ挑んだ力作。神山監督は石ノ森作品と相性が合うのかもしれない。続編を激しく希望。
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【第5位】『虹色ほたる 永遠の夏休み』
虹色ほたる―永遠の夏休み

虹色ほたる―永遠の夏休み

白蛇伝』などに代表される東映動画時代への回帰を思わせる意欲作。ホタルの舞うシーンの、実に美しきことよ。
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【次点】『伏 鉄砲娘の捕物帳』
伏 鉄砲娘の捕物帳 Blu-ray

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虹色ほたる』の東映動画に対し、こちらは昭和アニメへの回帰を目指した意欲作。Aプロ(現シンエイ動画)時代の「粋」が感じられる。主演の寿美菜子の男子勝りな演技も目を引く。
 
 
こうしてみると、細田監督の強さももちろんだが、Production I.G作品が3作品入っているというのもすごい。(『009 RE:CYBORG』はサンジゲンとの共同制作。)しかも、それぞれ作風もジャンルも異なる。ジブリが若手育成に試行錯誤を繰り返している中、IGがポストジブリとして今後劇場アニメ界を席巻するのも時間の問題かもしれない。今後のIGの劇場作品にはますます注目したいところだ。
 
次回はいよいよ映画ベストテンやります。