ぬるオタな日々 by 少恒星

アラフォー独身のぬるオタの日々戯言。

藤子・F・不二雄大全集刊行にあたっての障壁

藤子・F・不二雄大全集|小学館
藤子・F・不二雄先生の生み出された漫画作品完全網羅を目指す」まで謳っている以上、これには期待せずにはいられない。が、気になる点が多いのもまた事実で、本当にやってくれるだろうかという疑いもないわけではない。ここで、「藤子・F・不二雄大全集」の刊行にあたってのいくつかの懸念材料をまとめてみることにする。


・セリフは発表当時もしくは単行本初版時のままなのか?
小学館は、セリフの言い回しには特に気を遣うことでよく知られている。代表的なのは「狂う」という表現。『ドラえもん』第4巻に収録されている「アベコンベ」では、顔が上下逆さまになっておかしくなったドラえもんに向かって、初出時は、のび太は「わあ、ドラえもんがくるった。」と言うのだが、現在の版では「ドラえもんがへんだ」に差し替えられている。また、ひみつ道具の一つ「マッドウォッチ」の漢字表記は、初出時は「狂時機」だったのが、現在は「驚時機」に差し替えられている。しかし、時間の流れを変化させる道具なのに、これでは意味が通らないのではないか?
また、差別語以外の理由で差し替えられるケースもある。それは、発表当時の流行りものを、わざわざ現代に合わせてしまうもの。ぴっかぴかコミックスの『ウメ星デンカ』2巻(2006年刊行)の「さようならデンカ」では、初出時(1969年)は「ピンキーとキラーズ」と「コント55号」が、「ムシキング」と「モーニング娘。」に差し替えられている。さすがに現代の子供たちにはわからないだろうという配慮なのだろうが、こうした数々のセリフの改変には不満を覚えるファンも多い。


・『オバケのQ太郎』『ジャングル黒べえ』も含まれるのか?
前者は単行本は絶版となっており、絶版の理由については「遺族の意向」であったり、「著作権の問題」であったりとさまざまな憶測が流れている。後者は、「黒人差別をなくす会」が『オバQ』の「国際オバケ連合」の回の描写が黒人差別であると抗議したため、その余波を恐れて小学館側が自主回収し、そのまま絶版されたという。この2作品は、俗に言う「封印作品」の代表的存在として知られる。
公式サイトによれば、第1期のラインアップに『オバケのQ太郎』も含まれているため、その心配はなさそうだ。またA先生との事実上の合作である『海の王子』も含まれていることから、今後、第2期以降で『UTOPIA 最後の世界大戦』『すすめロボケット』『てぶくろてっちゃん』などの藤子不二雄初期作品もお目見えするかもしれない。
このほか、各作品の単行本未収録作品もどうなるか気になる。あまりにシュールすぎてニコ動などで話題の「分解ドライバー」(『ドラえもん』)や、前述した「国際オバケ連合」(『オバQ』)はどうなるのだろうか。


・学年向けバージョン全てを収録?
ドラえもん』は、小学館の学年別学習雑誌に連載された際、学年別の読者に合わせた作品が作られており、例えば第一話の「未来の国からはるばると」には数バーション存在する。単行本第1巻に収録されているものは「小学四年生」で掲載されたものだ。低学年向けに描かれた作品は、最近ではぴっかぴかコミックスやカラー作品集に収録されているが、それでも未収録のものが多い。完全網羅となれば、学年向けに描かれたそれぞれの作品も収録するということだろうか。そうなれば、作品数はますます膨大になってくる。最大600ページ、33巻で足りるのか?


う〜ん、考えれば考えるほど、気になることがどんどん出てくる。ここは素直に、今後の続報を待つより他に仕方はないか。
そして、何よりも最大の懸念材料。それは・・・


本棚の空き。


ぶっちゃけウチはもう空きありません。どうしよう…。