ぬるオタな日々 by 少恒星

アラフォー独身のぬるオタの日々戯言。

アカデミー賞受賞効果への複雑な思い

遅ればせながら『おくりびと』のアカデミー賞外国語映画賞受賞、『つみきのいえ』の短編アニメーション賞受賞おめでとうございます。『おくりびと』は確かに去年のナンバーワン邦画という評価は間違っていないが、まさかオスカーまで獲るとは思いもしなかった。それだけ日本の死生観がアメリカでも受けたということだろう。
さて、その受賞を受けて各地の映画館にはたくさんの観客が詰めかけているようだが、そんな中、その効果は意外なところにまで及んでいる。なんと閉館した映画館がこの受賞を機に復活しているという。

映画館「港座」:02年閉館、「おくりびと」で復活決意 5月再開へ(毎日新聞)


◇撮影に使用、勇気もらい−−運営ボランティア募集
 02年春に閉館した酒田市の映画館「港座」。アカデミー賞外国語映画賞に選ばれた「おくりびと」(滝田洋二郎監督)の撮影に使われたことをきっかけに、オーナーの阿部剛さん(47)が復活させようと決心した。ボランティアを募り、手弁当での映画館運営に乗り出す。【釣田祐喜】
 スクリーン手前に、幅約9メートル、奥行き約5メートルの芝居用の舞台を構えた大劇場。1954(昭和29)年に改築されたが、芝居小屋としての創業は1887(明治20)年。1960〜70年代は、加山雄三の「若大将」シリーズなどでにぎわったが、娯楽の多様化で徐々に観客数は減少。市内に5軒あった映画館は次々姿を消し、最後に残った港座も閉館した。
 「人がばーっと入っていた劇場に、閉館後にぽっと立っているのは私一人。さみしさを感じた」
 05年に、ジャズコンサートが開かれ、建物の活用を考え始めた。「おくりびと」の撮影は07年春。作中で本木雅弘さんが、遺体役を務める広報用ビデオが撮影された。「撮影はすごく豪華なコメディーを見させてもらったようだった」と阿部さんは話す。滝田監督から「昭和の香りが残るすごい映画館。残さなきゃ駄目だ」と言われたことがうれしかった。「映画館なのだから、また、映画を見てもらおう」。そんな決意が芽生えた。
 今年5月の再開を目指し、映画館運営ボランティアを募集中。既に教員や、飲食店主ら約10人が賛同してくれている。当面は著作権の切れた名作や、アマチュアの短編映画を上映するが、軌道に乗り次第、新作を上映する予定だ。「撮影に来てくれたことが大きな光だった」と振り返る阿部さん。「おくりびと」は地元に勇気も生み出した。

「おくりびと」効果、盛岡の老舗映画館が期間限定で“復活”(読売新聞)


 アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」(滝田洋二郎監督)人気を受け、1月末で閉館した盛岡市内の老舗映画館が、期間限定で“復活”した。
 市内では2館がこの映画を上映してきたが、受賞以来、連日満席。このうちの1館の業者が、老朽化のため閉めた「盛岡ピカデリー」(176席)で急きょ上映を決めた。
 映画看板はなく、タイトルを大きく入り口に掲げ、「『おくりびと』が再びお客さんを迎える『迎えびと』になった」と同館。3月中旬までの予定だが、延長も検討するという。

一方、滋賀県大津市の滋賀会館シネマホールでは、補助席を急遽設けるほどの人気ぶりだという。

滋賀会館にもオスカー効果「おくりびと」で満席御礼京都新聞


 滋賀会館シネマホール(大津市)で24日、米アカデミー賞の外国語映画賞作品「おくりびと」の上映が始まった。受賞直後ということもあり、通常の席数では足りず、補助席を設けるほどの人気ぶりで、1日で300人を超える観客が詰めかけた。シネマホールは「通常の上映で、これだけ来ることはなかった」と、オスカー効果を喜ぶ。

 映画事業会社RCSによると、昨秋、モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞したころ、上映を決めていたという。

 午前10時の上映には、1時間半前から順番を待つ人が見られた。午後の上映では、約100人の座席では足りず、補助席を加えて120人を超えるファンが詰めかけた。問い合わせの電話もひっきりなしで、スタッフは対応に追われた。誕生日に合わせて夫と訪れた草津市の田中京子さん(52)は「賞を取ったのでこの映画を選んだ。早めに出てきてよかった」と話していた。

 同ホールファンクラブ代表の中川学さん(55)は「滋賀会館に来るのが初めてという人も多いだろう。旅立ちという表現がぴったりの、生きることをうまく描いた作品」と話していた。4月上旬まで上映予定。

この滋賀会館は、滋賀県の文化発信拠点として長年地元住民に親しまれた施設だったが、施設の老朽化や利用客の減少が進んだため、県が来年度末での廃止の方針を打ち出している。多くの良作を送り出してきたシネマホールには、映画ファンからは存続を求める声が強いという。廃止後の滋賀会館の扱いは未定とのことで、シネマホールの今後もどうなるかは不透明だ。
そうした中での今回の『おくりびと』のオスカー獲得。客が来るのは嬉しいことではあるが、反面、そうした“わかりやすい”評価を受けた作品でないと人は興味を持ってくれない、来てくれないという皮肉な一面ものぞかせる。もし、『おくりびと』が受賞を逃していたら、ここまでの効果はなかっただろう。それだけに、アカデミー賞受賞というニュースで、映画館に多くの人が足を運ぶ現象に複雑な気分を覚えるのである。